シラバス参照

科目名 技術標準と知的財産特論【MR】 
科目名(英字) Advanced Study of Technical Standards and Intellectual Property 
ナンバリング MPCD23 
年次 1年次 
単位数
期間 前期 
担当者

村川 一雄(ムラカワ カズオ)




授業のねら
い・概要
 近年、世界経済や企業活動は一段とグローバル化しており、さまざまな産業分野(通信、電気、化学、医療、農業など)において標準化活動が加速されている。例えば、無線携帯の通信方式の5Gに関する標準化が完了し、当該標準が自動運転や遠隔制御などに利用され始めており、標準を介して異業種間の交流や提携が活発化している。

 標準はある特定の技術を誰でも利用できるように規格化された文書であるが、その中にはさまざまな知的財産が含まれている。ここで、標準に含まれる特許は標準必須特許(SEP:Standard Essential Patent)と呼ばれる。このSEPに対して、MPEG-LAやSISBEL,AVANSIなどの管理団体(特許プール)が多数存在している。なお、SEPのライセンスに関わる知財紛争に繋がるケースも多々あることから、企業の知的財産部員は標準化団体や標準、SEPなどの理解が不可欠となっている。

本講義では、標準に関わる全般的に必要な知識とスキルをつけるため、標準化団体や標準、標準必須特許とは何か、どのような点に留意する必要があるかについて体系的な講義を図る。その効果を高めるため、講義の中間回において特許庁から提供される標準化事例研究素材を活用し、標準化を進める背景やメリット、知的財産戦略について理解を促進させることを狙う。

本講義において、標準と知的財産の関係について理解を図ることで、知的財産の新たな活用方法や効果、留意点について、体系的に学ぶことができる。

本講義は、メディア講義対応である。

〇補助教材UR(YouTube動画): https://www.youtube.com/watch?v=x2Rad9NJnwQ 
授業計画
テーマ 内容・方法等 予習/復習
第1回 ガイダンス  本講義の狙いや目的、取得すべきスキル、講義での課題や評価方法などについて紹介する。  □予習:シラバスを確認し、標準化機関のISOやIEC、ITUのWEBにアクセスし、その機関の概要を調べておくこと。(90分)
□復習:講義内容を振り返り、標準化の重要性やその意義のポイントを整理し、ノートにまとめることで理解の定着を図ること(90分) 
第2回 技術標準団体と標準規格  ISO/IEC/ITUなどの国際標準化団体とその活動、技術標準の役割についてについて理解し、説明できる。  □予習:講義資料を事前に読み、ISOやIECなどの国際標準化団体とその活動、技術標準の役割について理解すること(90分)
□復習:講義内容を振り返り、講義で重要なポイントを整理し、ノートにまとめることで理解の定着を図ること。(90分) 
第3回 標準必須特許(SEP)とその課題  技術標準に含まれる標準必須特許(SEP)とその特徴、課題について理解し、説明できる。  □予習:講義資料を事前に読み、事前にSEPについてWEBや書籍などで調査し、どのような問題があるのか調べておくこと(90分)
□復習:講義内容を振り返り、今後、SEPに関してどのような問題が想定されるか考察し、講義で重要なポイントを整理し、ノートにまとめることで理解の定着を図ること。(90分) 
第4回 IPRポリシーとIPR宣言書、その課題  技術標準に含まれる特許に関するIPR宣言書(IPRポリシー)やIPR宣言書の役割とその課題について理解し、重要なポイントについて理解し、説明できる。  □予習:講義資料を事前に読み、IPR宣言書についてWEB等を利用して調べ、どのようなIPR宣言がだされているか調べておくこと(90分)
□復習:講義内容を踏まえ、IPR宣言書に係る想定される知財問題に対してどのように対応すべきか考察し、講義で重要なポイントを整理し、ノートにまとめることで理解の定着を図ること。(90分) 
第5回 特許トプールとライセンス等に関する課題  効率的なライセンス交渉の実現手段としての特許プール(パテントプール)と関連する 諸問題(ホールドアップやホールドアウト、必須性判断など)について理解し、重要なポイントについて理解し、説明できる。  □予習:講義資料を事前に読み、具体的にどのような特許プールがあるかWEBで調べ、その管理団体を事前に調べること(90分)
□復習:講義結果を踏まえ、特許プールの特徴とその課題を整理しまとめることで、講義で重要なポイントを整理し、ノートにまとめることで理解の定着を図ること。(90分) 
第6回 標準化に関する知財訴訟事例と各国(日欧米中)の規制と立法動向  標準化に関する知財訴訟の事例を紹介し、事例を通した各国の規制(権利の制限)や立法動向について理解し、その重要なポイントについて説明できる。外部講師による講義を想定している。  □予習:講義資料を読み、最近の標準化訴訟に関する記事をWEB等で調べ、どのような争点があるのか調べておくこと(90分)
□復習:講義結果を踏まえ、知財訴訟にどのように対応し、また、訴訟回避に向けてどのような戦略が必要か整理することで、講義で重要なポイントを整理し、ノートにまとめることで理解の定着を図ること。(90分) 
第7回 標準化事例研究演習(1)  標準化事例研究(ソニー・フェリカ)を活用し、標準化を進めるで重要なポイントについて理解し、説明できる。  □予習:フェリカに関連する事例研究を読み、標準化における重要ポイントを事前に抽出し、その実現の可否について考察しておくこと(90分)
□復習:事例研究から得た知識や知見を整理しまとめ、今後、自身の業務に役立てるには何が必要か整理することで、講義で重要なポイントを整理し、ノートにまとめることで理解の定着を図ること。(90分) 
第8回 標準化事例研究演習(2)  標準化事例研究(サイバーダイン 生活支援ロボット)を活用し、標準化を進めるで重要なポイントについて理解し、説明できる。  □予習:サイバーダイン(生活支援ロボット)に関連する事例研究を読み、どのような行動や戦略が重要であるか事前に理解しておくこと(90分)
□復習:講義結果から標準化において何が重要であるかを整理しまとめることで、講義で重要なポイントを整理し、ノートにまとめることで理解の定着を図ること。(90分) 
第9回 標準化事例研究演習(3)  標準化事例研究(オリンパス 医療機器用カメラ)を活用し、標準化を進めるで重要なポイントについて理解し、説明できる。  □予習:オリンパス(胃カメラ)に関連する事例研究を読み、医療機器の標準化の重要ポイントを理解しておくこと(90分)
□復習:講義結果を踏まえ、標準化の重要ポイントを自身の業務に役立てるには何が必要かを考察することで、左記の目標を達成すること(90分) 
第10回 標準化事例研究演習(4)  標準化事例研究(サムスンとアップル訴訟)を活用し、標準化を進めるで重要なポイントについて理解し、説明できる。  □予習:SEP(サムスンとアップルの知財訴訟)に関連する事例研究を読み、標準化における知財訴訟が何故、発生するのかについて理解すること(90分)
□復習:講義結果を踏まえ、知財訴訟を回避するためには何が必要であるか整理し、講義で重要なポイントを整理し、ノートにまとめることで理解の定着を図ること。(90分) 
第11回 標準化事例研究演習(5)  準化事例研究(BOSCH)を活用し、標準化を進めるで重要なポイントについて理解し、説明できる。  □予習:BOSCH(自動車社内ネットワーク)の事例研究を読み、標準化における仲間づくりの重要性につい理解し、考察しておくこと(90分)
□復習:講義結果を踏まえ、標準化における仲間づくりの重要性とその効果、リスクについて整理し、講義で重要なポイントを整理し、ノートにまとめることで理解の定着を図ること。(90分) 
第12回 標準化事例研究演習(6)  標準化事例研究(MPEG2)を活用し、標準化を進めるで重要なポイントについて理解し、説明できる。  □予習:映像圧縮方式(MPEG2)の事例研究を読み、パテントプールの立ち上げ方法とその意義や課題についてWEB等で調べ事前に理解しておくこと(90分)
□復習:講義の結果を踏まえ、標準化を成功するために何が必要であるかを整理しまとめを通して、講義で重要なポイントを整理し、ノートにまとめることで理解の定着を図ること。(90分) 
第13回 標準化事例研究演習(7)  標準化事例研究(テレビ用音声合成)を活用し、標準化を進めるで重要なポイントについて理解し、説明できる。  □予習:テレビ用音声合成の事例研究を読み、どのような標準規格が存在し、どのような管理団体があるかをWEB等で調べておくこと(90分)
□復習:これまでの調査結果を振り返り、講義で重要なポイントを整理し、ノートにまとめることで理解の定着を図ること。(90分) 
第14回 中国標準化戦略とその狙い  国策的に標準化活動を活発化している中国に焦点をあて、中国の標準化戦略とその狙いについて理解し、重要なポイントを説明できる。  □予習:講義資料を読み、WEB等を活用し中国質量管理総局や中国通信標準化協会のサイトにアクセスし、どのような活動をしているか事前に調べておくこと。(90分)
□復習:講義結果を踏まえ、中国の標準化戦略と中国政府の政策との密接性について整理し、講義で重要なポイントを整理し、ノートにまとめることで理解の定着を図ること。(90分) 
第15回 標準戦略の立案演習  保有特許技術の普及展開を狙った標準化戦略の立案とその意義について理解し、その狙いや効果を説明できる。  □予習:具体的な特許を一つ選択肢、その特許を標準規格にするためにどのような戦略があるか、事前に考察しておくこと。(90分)
□復習:立案した標準化戦略を実行するためにどのようことがポイントとなるかを整理し、講義で重要なポイントを整理し、ノートにまとめることで理解の定着を図ること。(90分) 
到達目標
以下に示される項目を達成することを、ミニマムリクワイヤメントとする。

(1)標準化団体やその活動を理解し、標準規格に含まれる知的財産の役割を理解し、説明できる。
(2)IPRポリシーやIPR宣言書、RAND(合理的かつ被差別条件)等に関して理解し、その課題について説明できる。
(3)標準化に関する知財訴訟事例や各国の規制や立法動向について理解し、説明できる。
(4)標準化事例研究について調査し、標準化を進める重要性とその課題について理解し、説明できる。
(5)標準化を強化する中国の標準化戦略とその課題について理解し、説明できる。
(6)標準規格の読解や標準化戦略立案において自ら考え、提案することで、標準化の重要ポイントを理解し、説明できる。 
評価方法
講義への参加姿勢や貢献度を踏まえ、平常点15%、事例研究演習85%の割合で総合的に評価する。 
成績評価
基準
到達目標(1)を達成できていない場合には、本単位を取得できない(欠格条件)。
平常点(授業中の発言などを含む)、演習課題の発表内容や質疑応答を総合して評価する。
総合点 90~100 評価「A」:
総合点 80~89 評価「B」:
総合点 70~79 評価「C」:
総合点 60~69 評価「D」
総合点 0~59 評価「F」
(注)評価の結果は、「A」~「D」を合格、「F」を不合格とする。
上記到達目標の(1)から(5)について理解していることを必要条件とし、さらに事例研究演習での発表や質疑応答を総合的に点数評価する。 
教科書
書名 著者名 出版社名
1. 技術標準と知的財産特論(プリント)     
参考書
書名 著者名 出版社名
1. 技術競争と世界標準  山田 肇  NTT出版 
2. デファクトスタンダード  山田英夫  日本経済新聞社 
3. 知的財産制度とイノベーション  後藤 晃、長岡貞男  東京大学出版会 
4. 情報通信と標準化  淺谷耕一監修  電気通信振興会 
5. 知的財産と標準化戦略  藤野仁三  八塑社 
受講心得
授業では最新の動向を調査し、問題点や課題について討論形式で議論するので積極的に参加すること。

事前に与える課題について調査し発表資料を準備すること。講義での発表・討論結果を基にさらに追加調査し、発表資料を改訂すること。

演習結果について、翌週もしくは最終回までにフィードバックを図り、理解を促進すること。

本科目はメディア授業対応に該当する。
課題の中で誤解等があれば講義中に解説するのでこれを通して理解を深めること。 
オフィス
アワー
講義は、前期の毎週土曜日の1限目とする。なお、質問や相談などは適宜、メールでの対応のほか、水曜日~金曜日の5限目、研究室での個別対応可能である。 
実践的教育
【実践的教育】企業勤務経験の教員が、企業における国内外の標準化活動の経験を踏まえ、標準化の基礎や事例について実践的かつ分かりやすく講義を行う。