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科目名 IPビジネス契約特論【MR】 
科目名(英字) Advanced Study of Intellectual Property Business Contracts 
ナンバリング MPCD21 
年次 1年次 
単位数
期間 前期 
担当者

上田 亮祐(ウエダ リョウスケ)




授業のねら
い・概要
知的財産権の利活用は業種、規模を問わず多くの企業にとって最重要項目となっており、近年の情報技術の発達やそれに伴う経済活動のグローバル化によって、その傾向はますます強くなっている。
他方で、知的財産権を取り巻く法制度や具体的な行政・司法の手続は決して単純明快なものではなく、弁護士や弁理士といった専門家のみならず、企業の法務・知財部門担当者にとっても、これらの法制度、手続を理解しておく重要性は非常に高い。このような法制度等の理解は、実際に企業が自己の知財戦略を策定し、知的財産関連の契約を締結する前提となるものであり、法務・知財部門の担当者がこれらの知識を身に着けておくことは必要不可欠である。
本講座では、どのような場合に法律上の契約関係が成立するのかといった基礎的な部分から、特許、商標、著作権等の知的財産権について、一般的にどのような内容でライセンス契約が締結されるのか、どのような場合に知的財産権侵害が問題となるか、及びその後の対応といった実務上の知識までを、体系的に修得することを目的とする。 
授業計画
テーマ 内容・方法等 予習/復習
第1回 契約とは - 民法における契約の概念 -
主要な知的財産関連の法制度 
知的財産権に関連する契約について学ぶ前提として、契約がどのような場合に成立し、民法が契約についてどのように規定しているかを解説し、特許法、商標法、著作権法、不正競争防止法などといった知的財産権に関する法制度の全体像を俯瞰する。  ・契約が成立するために必要なものがなにか、民法は契約についてどのような規定を置いているか、法律の規定と契約の効力はどのような関係に立つかを調べておくこと。(120分程度)
・契約の成立や民法の規定内容、特許法その他の知的財産法について、書籍の確認する等して講義内容を復習すること。(120分程度) 
第2回 知的財産権侵害の成否1
特許権侵害の有無の検討方法、自社・他社による権利侵害が発覚した場合の想定される対応等とライセンス契約 
自社製品が他社の特許権を侵害し、あるいは他社製品が自社の有する特許権を侵害しているとの疑いが生じた場合、侵害の有無について適切に検討・判断した上で、可能な限り自社に有利な選択肢を採ることが必要となる。
本講義では、実際に特許権侵害をどのように検討するのか、また権利侵害の疑いが生じた場合に権利者・侵害者側のそれぞれにおいて、どのような対応が必要となるか、侵害者側の対応としてのライセンス契約の位置づけ等について解説する。 
・特許庁が公開している特許審査基準のうち、新規性・進歩性の項目を確認しておくこと。また、実際の特許公報についても目を通してみること。(120分程度)
・特許の有効性や、ある製品が特許権を侵害するか否かをどのように検討すべきかを意識しながら、講義内容を復習すること。(120分程度) 
第3回 知的財産権侵害への対応2
訴訟における攻撃防御、和解による解決、知財調停など 
特許権侵害が問題となり、当事者間の交渉でライセンス契約の締結が実現しなかった場合の具体的な対応について解説を行う。
ここでは、裁判の手続がどのように進行するかや、和解によって裁判を終結する場合の和解契約の内容のほか、知財調停など他の紛争解決手段についても解説する。 
・特許権侵害が問題となった場合、権利者がどのような主張を行い、侵害者側はどのように反論し得るのかを検討しておくこと。(120分程度)
・侵害者側の反論、及びそれに対する特許権者側の再反論として、どのようなものがあるかを整理しながら、講義内容を復習すること。(120分程度) 
第4回 知的財産契約の概要
ライセンス契約の法的性質 
特許、商標、著作権など各種知的財産権に係るライセンス契約について、それぞれのライセンス契約に共通する事項(法的性質など)、無体物である知的財産権を取り扱う契約の特殊性について概説し、理解を深める。  ・特許法その他の知的財産法について、制度の概要を理解しておくこと。(120分程度)
・参考書等において、どのようなライセンス契約が取り上げられているか、ライセンス契約についてどのような説明がされているかを確認し、講義内容を復習すること。(120分程度) 
第5回 特許ライセンス契約1
実施許諾の種類、許諾範囲、実施料の設定方法等 
特許ライセンス契約の具体的な条項例を踏まえて、他社への実施許諾をどのように行うか、またどのようにして具体的な実施料を設定するか等について解説する。他社に対してライセンスする立場であるか、ライセンスを受ける立場であるかによって、規定すべき条項がどのように変わってくるかについて理解を深める。  ・特許ライセンス契約について、実施許諾の範囲や実施料の定め方について、書籍やインターネットなどで実際のライセンス契約の内容を確認しておくこと。(120分程度)
・実際のライセンス契約や、書籍等で紹介されているひな形等を基に、どのような条項が規定されているかや、ライセンサー、ライセンシーそれぞれの立場からどのような修正が考えられるかを検討し、講義内容を復習すること。(120分程度) 
第6回 特許ライセンス契約2
改良技術の取扱い、知財保証条項、不争義務、クロスライセンス等 
特許ライセンス契約において一般的に規定されることが多い条項について解説するほか、クロスライセンス契約など、典型的なライセンス契約とは異なる内容の契約類型を紹介し、特許に関連する契約について理解を深める。  ・特許ライセンス契約について、許諾範囲や実施料以外にどのような条項が定められるかについて、書籍やインターネットなどで実際のライセンス契約の内容を確認しておくこと。(120分程度)
・改良技術に関する条項や不争義務、クロスライセンスについて、ライセンサー、ライセンシーそれぞれの立場からどのような内容が有利になるかを検討し、講義内容を復習すること。(120分程度) 
第7回 職務発明
従業員が創作した発明の取扱い、職務発明規程の法的性質、条項等 
企業活動において、従業者が創作した発明の取扱いは極めて重要であるが、しばしば紛争の原因にもなり得る。
そこで、特許法による職務発明の規律、企業があらかじめ規定しておくべき職務発明規程の一般的な内容などを解説し、職務発明の取扱いについて理解を深める。 
・職務発明に関する特許法の規定を確認し、著名な裁判例についても内容を確認しておくこと。(120分程度)
・どのような場合に職務発明規程が問題となるか、どのような規程が企業において望ましいか等を検討しながら、講義内容を復習すること。(120分程度) 
第8回 秘密保持契約、ノウハウライセンス契約
秘密保持契約の法的性質および一般的な内容、ノウハウの法律による保護等 
企業が締結する機会が最も多い秘密保持契約について、その締結場面、秘密情報の取扱い方法などについて解説を行う。
また、自社で秘密として管理するノウハウのライセンスについても、秘密情報の保護とトピックが重なるため、合わせて解説する。 
・秘密保持契約が当事者にどのような権利を与え、義務を負わせるかについて、特許ライセンスとの共通点、相違点を意識して検討しておくこと。(120分程度)
・秘密保持契約について説明している書籍を確認するとともに、不正競争防止法によって営業秘密が保護される要件等につき、営業秘密管理指針などを確認しながら講義内容を復習すること。(120分程度) 
第9回 著作権ライセンス契約
契約の種類および条項作成上の留意点、キャラクターの商品化ライセンス等 
著作権のライセンス契約は、その契約類型が多岐にわたるため、どのような場合に著作権のライセンス契約が締結されるかを俯瞰した上で、キャラクターの商品化ライセンス契約を例に、著作権のライセンス契約における留意事項等について解説する。  ・著作物の利用行為について著作権法がどのように規定しているか、著作権と著作者人格権の違い等について確認しておくこと(120分程度)
・著作権のライセンス契約の種類、条項の定め方などについて、参考書などを確認しながら講義内容を復習すること(120分程度) 
第10回 ソフトウェアライセンス契約
法的性質、著作権法その他の関連法規との関係及び留意点 
ソフトウェアの使用許諾を目的とした契約はこれまでにも存在していたが、近年ではSaaS(Software as a Service)の急速拡大もあいまって、ソフトウェアのライセンス契約についてその特性などを理解することの重要性が高まっている。
そこで、ソフトウェアライセンスについて解説を行うとともに、いわゆるSaaSの場合にはどのような点に注意が必要となるか等について、理解を深める。 
・ソフトウェアライセンス契約にどのような類型があるか、SaaSがどのような形態のサービスであって、どのような事項が問題となり得るかについて確認しておくこと。(120分程度)
・ソフトウェアライセンスに関する書籍を確認するなどして、講義内容を復習すること。(120分程度) 
第11回 商標ライセンス契約
商標の使用許諾契約および禁止権不行使契約、フランチャイズ契約等 
商標ライセンス契約がどの様な場合に、何を目的として締結されるかについて解説を行うとともに、関連するトピックとして、フランチャイズ契約についても解説し、商標関連の契約について理解を深める。  ・商標権の特徴について、特許法や著作権法などとの違いを意識しながら確認しておくこと。(120分程度)
・商標ライセンス契約について、これまでに学んだ特許ライセンスや著作権ライセンスとの違いを意識しながら、講義内容を復習すること。(120分程度) 
第12回 試料提供契約および共同研究・出願契約、データ提供契約  企業が大学などの研究機関と共同で研究開発を行い、その成果について特許出願を行う場合がある。このような場合、企業間の契約とはまた異なった考慮が必要となる。ここでは、共同研究・開発契約のほか、共同研究を行う前段階として締結される試料提供契約について解説する。
また、現代ではデータ分析による自社サービスの改善など、データの取扱いの重要性も高まっているが、そのようなデータは必ずしも常に知的財産として法的に保護されるとは限らないため、契約による保護が必要不可欠である。そこで、このようなデータの取扱いに関する契約についても解説し、理解を深める。 
・大学がWEB上で公開している試料提供契約や共同研究契約のひな形を確認しておくこと。(120分程度)
・大学との共同研究契約において、大学がどのような事項に関心・利害関係を有するかという観点から、講義内容を復習すること。(120分程度) 
第13回 システム開発契約  近年、企業のDX化が重視される中で、システム開発に関する契約について、その法的性質やどのような場合に紛争となるか等を理解しておくことの重要性が高まっている。そこで、システム開発契約について解説を行い、契約内で規定すべき条項や紛争となりやすい事項等について理解を深める。  ・システム開発がどのように進められていくのか、民法上はどの契約に分類されるのかを確認しておくこと。(120分程度)
・システム開発契約にはどのような条項が定められるか、またどのような場合に紛争が生じるかといった観点から、講義内容を復習すること。(120分程度) 
第14回 不正競争防止法、会社法、労働法、独占禁止法など企業活動に関連する法律について  特許は自社の有する技術・アイディアを公開する代償として一定期間の独占権を得られる制度であり、情報の公開が前提となっている。これに対し、情報を一切公開せず自社の営業秘密として法的保護を図る場合には、不正競争防止法の理解が必須となる。
また、企業間の契約は主に民法によって規律されるが、企業内部の意思決定に関しては会社法が、企業と従業員との関係は労働基準法をはじめとする労働法が、それぞれ特別の規律を及ぼしており、これらの法律についても理解しておくことが望ましい。
そこで、本講義では企業活動に影響を及ぼす各法律の内容を概観し、知財関連契約の内容に与える影響について解説する。 
・不正競争防止法がどのような行為を不正競争として規定しているかを確認するとともに、知的財産法と独占禁止法の関係について検討しておくこと。(120分程度)
・いわゆる典型的な知的財産法以外の法律について、知財とどのような関連性を持ち得るかという観点から、講義内容を復習すること(120分程度) 
第15回 総括 - 知的財産契約の全体像と関連法の内容 -  これまでの講義で解説が不十分なトピックがあった場合に、補充的に解説を行い、またこれまでの講義内容を全体的に俯瞰する。  ・これまでの講義で疑問があった場合は、自分なりに結論を考えておくこと(120分程度)
・これまでの講義内容のうち、自身の理解が不十分であると感じる事項について復習すること。(120分程度) 
到達目標
(1) 知財契約および関連法規の全体像を理解できる。
(2) 契約の一方当事者の立場から簡単な特許ライセンス契約の内容を分析できる。
(3) 知財に関連する各契約の特性、典型的な紛争事例を大まかに把握し理解できる。
(4) 契約の一方当事者の立場から特許ライセンス以外の契約についても内容を分析できる。
(5) 知財法及び関連法規が知財契約の内容に与える影響について理解できる。
(6) 講義中の質疑に積極的に応答できる。
(7) 課題でのグループ学習に協力できる。 
評価方法
授業中の発言・討論への積極的参加などの意欲・関心・態度: 30%
課題レポートの内容による知識・理解・判断・技能: 70% 
成績評価
基準
到達目標(1)を達成できない場合、本単位を取得できない(欠格条件)。
A:到達目標(1)を達成し、到達目標(2)~(7)について、90%以上の達成度で達成している。
B:到達目標(1)を達成し、到達目標(2)~(7)について、80%以上90%未満の達成度で達成している。
C:到達目標(1)を達成し、到達目標(2)~(7)について、70%以上80%未満の達成度で達成している。
D:到達目標(1)を達成し、到達目標(2)~(7)について、60%以上70%未満の達成度で達成している。
F:上記以外 
教科書
参考書
書名 著者名 出版社名
1. ライセンス契約のすべて 基礎編 改訂版(改正民法対応)  吉川達夫、森下賢樹、飯田浩司  第一法規 
2. ライセンス契約書作成のポイント  小坂準記  中央経済社 
3. 知的財産契約の実務 理論と書式 特許編  大阪弁護士会知的財産法実務研究会  商事法務 
4. 知的財産契約の実務 理論と書式 意匠・商標・著作編  大阪弁護士会知的財産法実務研究会  商事法務 
5. 知的財産契約の実務 理論と書式 先端技術・情報編  大阪弁護士会知的財産法実務研究会  商事法務 
受講心得
・ 特許法に関する基礎知識を身に付けていることが望ましい。
・ 特許法以外の知的財産法や企業による実際の知財関連契約について興味があることが望ましい。
・ 提出した課題レポートはフィードバック及び質問を受け付けるので、各自知識・技能の定着を図ること。
・ 本科目は録画形式メディア授業に対応する。 
オフィス
アワー
授業日の授業開始前又はEメールで院生の質問に対応する。
連絡先は初回の講義で連絡する。 
実践的教育
【実践的教育】法律事務所においてライセンス契約を始め知財関連の実務に多く携わる教員が知財契約の実務の基礎について講義と演習を行う。